アメリカに雅楽の何を伝える?

和太鼓や尺八が海外である程度知名度があるのに対し、大学としてはコロンビア大学、ハワイ大学、ケルン大学に雅楽コースがあるにも関わらず、雅楽は海外においての一般社会では知名度が低いように感じます。今通ってる学校でも日本のtraditionalinstrumentを吹いているって言ったらほとんどの先生が尺八かって聞いてきます。龍笛なんかいってももちろん誰も知りません。

まず雅楽がこちらにあまり伝わっていない理由として考えられるのが単調なリズム、西洋音楽のように感情を直接的に表現していないから曲に抑揚がない、だから外国人がそれを聞いた時にどう反応していいのか分からない。それと僕が思うのは、龍笛、篳篥は音がなかなかでないし、雅楽は独学が困難だ。そしてアメリカはそもそもJAZZの国であり、リズムが全く違う。

雅楽は確かに難しい。数年かけて練習しても一人で吹けって言われたらほとんどの人がまともに吹けない。例えば僕の母校の大学でも4年間毎日必死に練習しても、最終的に一人でお客さんの前で演奏しろって言われたら何人の学生が、たとえ10分でも吹く事ができるだろうか。。もちろん合奏芸術であるから一人で吹く事はあまりありませんが。

しかしなが先程述べた、雅楽は感情を直接的に表現していない、又、単調なリズムだからという考えでさえ、例えばこちらの人が感情を表現するものにしか興味がないとするならば禅というものが伝わっているわけない。meditationはこちらでも盛んだし、とあるNYの大学教授はその大学の学生さん全員に座禅を組むべきだと説いている。“無”という“感情”に興味があるというならば話は別になるが。ちなみに僕の“無”に対する考えは“無”は“有”の反対であり、“空”は無も有もない状態だと捉えている。

ならば雅楽は“空”を表現しているのか??ここまで考える必要があるのかどうか分からないが、とりあえず最後まで考えてみたい。

しかし人間というものは感情を持っている生き物で、何かを表現したいという心から雅楽も生まれて来たのだと思う。ならばなぜ人間の表現したいといういう気持ちから生まれた雅楽がこの国に他の和楽器に比べて伝わっていないのか?それは先にも述べたおそらく単調すぎるリズムと曲に抑揚がないという事と元々合奏として成り立っているものなので最低限の人数がいないと発表会すら開けないという理由からであると思う。さらに楽器や装束が高価であるという事も考えられる。

僕はプロフィールに“世界中に雅楽を!!”っと威勢のいい事を書いているがそもそも何を伝えるかという事も考えなければならない。雅楽演奏家を増やしたいのか、リスナーを増やしたいのか。

僕の目的は演奏者を増やしたいのでもなくリスナーを増やしたいのでもなく、ただその瞬間、その空間に“感激”を与えたいのです。そして以前にも述べましたが、もう一つは自分が“笛を知る”ということです。侍が剣をもって己を磨くと同じような考え方です。もちろん演奏者が増えたり、リスナーが増えるというのはうれしい事ですがそれはあくまでも結果の話です。

長い年月をかけて日本で培われたきた雅楽には“和”の精神というのが必要です。和の精神というのは個性を殺すして吹くや、どうだこうだとは全くもって違う別次元の話です。雅楽における和の精神というのは僕は呼吸だと思っています。“息”を合わせる、“意気”を合わせるのだと思うのです。よく雅楽の世界では、演奏会を段取る時などにおいて、「管絃だけじやねぇ、、舞いがないとね、、」という会話を耳にします。お客さんを管絃(舞のない曲)では引きつけれないと思ってる人が多すぎる。管絃だけ演奏してお客さんが帰ってしまう理由を自分達の技術のせいにする事なく雅楽の曲のせいにしてしまい、舞楽をすればお客さんが喜ぶと思っている人が多すぎる。

確かに先程、海外においては雅楽がいまいち伝わっていない理由としてリズムが違うや曲に抑揚がないからだと書きましたが、演奏者全員が“気”というものを理解し雅楽に望むならばどの芸術にも劣らない“空間”を作りだせるはずである。雅楽にはその力が備わっています。

ここを伝えなければならない。人々にこの空間の中にある人間にとってすごく大切な“普遍的である何か”を伝えなければならない。僕はこの部分がある事を信じているし、その部分を知っているのは今のところ自分の師匠以外知らない。

僕はこの“何か”を表現することができればそれは、世界にとっては一粒の雨であるかもしれないが、それは大きなものを変える事が出来るものだと思っている。具体的に何だとはいえないが、人の心を大きく動かすものであるに違いない。

しかしながらまだまだ僕は頭で考えているだけである。行が足らぬとつくづく感じるし、毎日自分の煩悩に負けてばかりだ。。道のりは遠そうだ。


でも絶対大きな花火あげてやる。

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